マンションの建て替えは法改正で加速するのか?

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はじめに

 今も、老朽化したマンションが増えています。それに対して老朽化マンションの建て替えや解体はなかなか進んでいないようです。なぜならそこには厳しい法律の障壁があるからです。この障壁は、本来権利を有する方たちを守るためのものですが、そのためにもう一つの権利を行使しようと考える方にとっては悩ましいものになっています。労力と時間をかけても最終的に合意形成されず、一筋縄ではいかないものばかりです。(なお、被災したマンションの建て替えにおいても厳しいルールがあり、喫緊の課題と言えます)
 このまま老朽化マンションが増え続ければ、地域の安全性が損なわれますし、空室にもなれば治安悪化になります。空室となれば管理料が減少し、管理体制も弱くなりますので更に問題が加速します。(区分所有建物の管理不全化を招くとともに、老朽化した区分所有建物の再生が更に困難になっていきます)

 しかし、長く続いたこの社会課題に対して、ようやく改善の兆しが見えてきました。これまでの決議要件に対していくつかの緩和が盛り込まれた制度となりそうです。ついに、区分所有法を見直す改正案を政府が提出するよう具体化したのです。(法務省は方針を固め、11月21日の法制審議会(法相の諮問機関)の部会でこの緩和案を盛り込んだ区分所有法改正要綱案の「たたき台」を示す。年度内に要綱を取りまとめ、来年1月召集の通常国会への改正案提出を目指す。)

現時点での課題

  • 課題1
    • 繰り返しになりますが、老朽化したマンション(区分少輔建物)は今後も急増する見込みです。そうなると、高経年区分所有建物の増加とともに区分所有者の高齢化を背景に、相続等を契機として、 区分所有建物の所有者不明化や区分所有者の非居住化が進行することで、ゴースト化となっていきます。
    • 不明区分所有者等は建替え等の決議において反対者と扱われることになります。結果、決議に必要な賛成を得るのが困難 になってしまいます。
  • 課題2
    • 特に、建替え等の区分所有建物の再生の意思決定は、要件が厳格で更に困難な状況になります。(現在建替えの多数決要件は5分の4以上)
  • 課題3
    • 被災して大きなダメージを受けた区分所有建物についても建替え等の要件が厳しい上に、被災区分所有法に基づく災害指定政令の施行後1年以内に決議が必要という、実態にそぐわないものになっている
築40年以上のマンションストック数の推移
○ 2022年末で、築40年以上のマンションは約125.7万戸存在する。
○ 今後、10年後には約2.1倍、20年後には約3.5倍に増加する見込み。
※ ()括弧内は築40年以上となるマンションの築年を示す。
※ 建築着工統計等を基に推計した分譲マンションストック戸数及び国土交通省が把握している除却戸数を基に推計。
出典:国土交通省/分譲マンションストック数の推移(2022年末現在/2023年8月10日更新)(PDF)
マンション建替え等の実施状況
○ マンションの建替えの実績は累計で282件、約23,000戸(2023年3月時点)。近年は、マンション建替円滑化法に
よる建替えが選択されているケースが多い。
○ マンション建替円滑化法にもとづくマンション敷地売却の実績は累計で10件、約600戸(2023年3月時点) 
※ 国土交通省による、地方公共団体等向けの調査をもとに国土交通省が集計
※ マンション建替円滑化法による建替え:建替え後のマンションの竣工
マンション建替円滑化法によらない建替え:建替え後のマンションの竣工
マンション建替円滑化法による敷地売却:マンション及び敷地の売却
※ 2004年、2005年は2月末時点、2006年、2007年は3月末時点、他は各年の4月1日時点の件数を集計
※ 阪神・淡路大震災、東日本大震災及び熊本地震による被災マンションの建替え(計115件)は含まない
出典:国土交通省/マンション建替え等の実施状況(2023年4月1日時点/2023年8月10日更新)(PDF)

老朽化したマンションを建て替え出来ない障壁とは

 今の法律では、マンションを建替えするためには所有者の5分の4以上の賛成が必要となります。これだけでもとても高いハードルになります。またその分譲マンションの借主に対しては、よほど正当な理由がなければ退去させることが難しいのです。このほかにも困難なものがあります。決議において多数決要件となるものを以下にまとめましたが、いずれも合意形成には多数決の要件ハードルが高いと言われています。
決議事項多数決要件(注1)
共用部分(外壁・通路など)の管理 過半数
共用部分や規約の変更 4分の3
建替え5分の4
区分所有関係の解消(取壊し、建物と敷地の一括売却など)全員同意
団地内の特定建物の建替えに関する承認特定建物所有者の5分の4+団地内建物所有者の4分の3
団地内建物の一括建替え団地内建物所有者の5分の4+各棟所有者の各3分の2
被災により全部滅失した場合の再建、敷地売却(政令施行後3年以内にする必要)(注2)5分の4
被災により大規模一部滅失した場合の建物敷地売却、建物取壊し敷地売却、取壊し(政令施行後1年以内にする必要)(注2)5分の4
大規模一部滅失における復旧決議4分の3
(注1)区分所有者や議決権の総数を分母とする
(注2)被災区分所有法に基づく決議

見込まれる改正案の中身について

  •  建て替えについて
    • 耐震性や耐火性の不足など一定の条件を満たす場合は「4分の3以上」の賛成で可能とする
    • 所在不明の所有者は、裁判所が認めれば多数決の母数から除外できる仕組みを導入する
  • マンションの建物・敷地の一括売却や取り壊しについて
    • 現在所有者「全員」の同意が必要、建て替えと同様に「4分の3以上」の多数決で決められるようにする
  • 大規模災害で被災したマンションを対象とする建て替えや取り壊しについて
    • 現在「5分の4以上」の賛成が必要、これを「3分の2以上」に引き下げる
実際にはこれだけではなく、タイトルだけで言えば ・区分所有建物の管理の円滑化、・区分所有建物の管理の円滑化、・区分所有建物の管理の円滑化、・被災区分所有建物の再生の円滑化と大きく分類されます。さらに中身は細部に枝分かれしている取り決めがあるようです。そのため、これから煮詰まっていくであろうこの法改正をしばらくチェックしていくことが必要になるでしょう。

最後に

マンションの建て替えについては、実際には所有者の合意形成のみならず、例えば賃貸として入居している方の権利もありますので、これらの見直しも同時に進んでいくことになるでしょう。借主側の保護があまりにも強く偏っていた部分もあった賃貸業界、少しバランスが改善されていくことを期待している方も多いのではないでしょうか。
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